北海道の6割程度の地表面積を有する中米の小国コスタリカに、地球上で確認されている全生物種のおよそ5%にあたる95,000種が確認されています。この驚異的な多様性の鍵となるのが、地理的な位置もさることながら起伏に富んだ地形とそれによって生ずる気候の影響です。
カリブ海側と太平洋側のちょうど真ん中に、北西から南東に向って背骨のように連なる4つの山脈があり、この山脈にカリブ海の蒸気をたっぷり含んだ貿易風が北東から垂直に向って吹き抜けます。貿易風は、カリブサイドの山の障壁にぶつかり雨や霧を発生させ、乾いた空気となって太平洋側に吹き抜けます。また、北東からの貿易風が弱まると今度は太平洋の蒸気を含んだ南西からの風の影響を受ける等、山脈を境としてカリブ海側と太平洋側では異なった気象条件となり、地域によって湿度、気温、降水量の年間平均も変化することから、コスタリカには多様な気候が存在しています。その代表的な地域として以下の6つのエリアが挙げられます。
コスタリカで最も降水量の少なく、乾季と雨季の差が大きい地域となります。乾季になると、カリブ海から吹いてくる湿った空気が山脈を通過する時にその水分のほとんどを失い、太平洋側に乾燥した風となって吹き込んできます。また、色鮮やかなか乾燥林の花が開花するのも乾季となります。雨季は5月中旬から11月中頃まで、貿易風が弱まるため太平洋から大陸に向かって湿った空気が流れ込み、恵みの雨を降らせます。
乾季のニコヤ半島
代表的な保護区
サンタロサ国立公園
グアナカステ国立公園
リンコン・デ・ラ・ビエハ国立公園
パロベルデ国立公園
この地域は北太平洋と比べて乾季が短く乾季中も時々雨が降ります。ドゥルセ湾付近は乾季が短いだけではなく国内で最も降水量の多い地域の1つで、カリブの低地と同じ熱帯多雨林となります。理由は、3,000メートル級の高い山が連なるタラマンカ山脈が、カリブから吹く貿易風を遮断しているため、太平洋の湿った空気がコンスタントに大陸側に吹き込み雨を降らせるからです。この地域は、最後の秘境とも呼ばれるコルコバード国立公園などダイナミックな自然が残るオサ半島があり、世界中のナチュラリストを魅了する場所です。
オサ半島
代表的な保護区
コルコバード国立公園
ピエドゥラス・ブランカス国立公
マリーノ・バジェナ国立公園
この地域は、標高が海面レベルから500メートルと低地に位置しているため、気温と湿度の高い熱帯雨林気候となります。年間を通して多くの雨が降り、鬱蒼と生い茂る豊かな熱帯多雨林を形成しています。
2月~4月、9月と10月は統計的に降水量の少ない乾季となります。とは言え、乾季の時季であっても1日のうちいつ雨が降ってもおかしくない雨の豊かな場所であり、生物多様性密度の高い場所となります。
トルトゥゲーロ国立公園
代表的な保護区
トルトゥゲーロ国立公園
バーラ・デル・コロラド野生生物保護区
カウイータ国立公園
カーニョ・ネグロ野生生物保護区
カリブ海沿岸から内陸に向かって標高500メートルから 1,000メートルの地域は非常に湿度の高い山麓となります。カリブ海から吹いてくる湿った空気は、この山脈という障害物に到着して上昇し、上空で冷やされ雨となってこの地域に降りますが、それも沢山の雨が降り注ぎ、地域によっては年間6,000 mmもの降雨量になります。この地域は着生植物を含む多彩な熱帯植物の豊かな地域であります。
ブラウリオ・カリージョ国立公園
代表的な保護区
ブラウリオカリージョ国立公園
テノリオ火山国立公園
イトイーセレレ生物保護区
バルビージャ国立公園
標高1,000メートルを超える地域は気温が著しく低くなります。降水量も多く、地域によっては年間を通して霧の多く発生する気候となり、熱帯雲霧林と呼ばれる雲や霧に覆われた常緑樹が形成されます。雲霧林は非常に湿度が高く冷涼なため、シダ、コケ、ラン、地衣類の他、多くの着生植物が植生する多様性に富んだ地域となり、ケツァールなど多くの野生生物の生息域となります。
モンテベルデ自然保護区
代表的な保護区
モンテベルデ自然保護区
サンタ・エレーナ自然保護区
ホワン・カストロ・ブランコ国立公園
コスタリカ最南端にあるタラマンカ山脈は3,000メートルを超える山々が連なっており、その中にコスタリカ最高峰であるチリポ山(3,820m)もあります。3,000メートルを越える地域には、パラモと呼ばれる高山植物帯が広がっています。日中の気温は10度前後となり、季節によっては朝晩の気温が氷点下になります。厳しい環境のため多様性は減少しますが固有種レベルは50%近くに達し、この地域にしか生息しない野性生物を観察することが出来ます。
チリポ国立公園
代表的な保護区
チリポ国立公園
ラ・アミスタ国際公園(世界遺産)
イラス火山国立公園
北緯8~11度の熱帯に属するコスタリカには、独特の地形と気候により非常に多様な植生が存在します。
よく耳にする植生区分として熱帯多雨林、熱帯雲霧林、熱帯乾燥林、熱帯常緑樹林、熱帯落葉樹林、熱帯サバンナ、パラモなど、53もの植生区分があります。
この植生区分は1986年にコスタリカ大学のエレーラ博士とゴメス博士により行われました。
その他に現在、最も使われている植物区分は、アメリカ合衆国出身の植物学者・気象学者であったホールドリッジ博士(1907-1999)の説いたライフゾーンです。
ホールドリッジ博士は、湿度、降水量、気温などの環境要素をベースとしてコスタリカを12のライフゾーンと12のトランジション帯(中間林)に分けました。
カラフルなマップは、ホールドリッジ博士が区分した12のライフゾーンを色分けして示したものです。
51,100平方キロという北海道の6割程度の国土に、乾燥地帯に植生するサバンナからアンデス山脈に植生する高山植物まで実に多様な植生が存在し、そこに生息する野生動物も多種多様です。
このように、小さな国土面積においてこれほど多様な植生をもつ国は世界でも稀有であることも、生物多様性の宝庫である理由と言えます。
環境保護の先進国として世界から 認知されているコスタリカは、国土の26%が保護されており、国家保全地域システム(SINAC)という機関が、11に分かれたそれぞれの管轄区域にある いくつもの国立公園や野生生物保護区を管理運営しています。保護区といっても様々あり、国際自然保護連合(IUCN)が定めるカテゴリーによって、コスタリカの保護区も以下のように カテゴリー分別されています:
国立公園:33
バイオロジカル・リザーブ:8
森林保護区:9
保全地区:31
野生生物保護区:75
湿地帯:14
自然記念物:1
海洋保護区:2
海洋管理地域:2
これらは、政府機関であるSINACが管理運営する 保護区ですが、モンテベルデ自然保護区は、熱帯科学センター(CCT)が管理運営している プライベートの保護区であるため 上記のリストには入りません。モンテベルデ自然保護区のようにプライベート機関が 管理運営している保護区もコスタリカ国内には数多くあるため、これらの保護区を入れると26%とはかけ離れた
大きな数値が保護区域として出てくるかもしれません。いずれにせよ、官民が一体となって環境保全、そして持続可能な開発のために働いている国。是非、コスタリカへ来て頂き、皆様の目で どのような国なのかを確かめに来てください。
No hay productos en el carrito.